楽山楽水日記(Ⅱ)

仙台市出身、今は柏市に住んでいます。旅行や山歩き、山菜やきのこ採り、家庭菜園、釣りなど、楽隠居の日々を綴ります。

読書

沢木耕太郎著「檀」

2023年8月12日(土) ブログ友達のtonaさん(ブログ「365連休の日々」主宰)に教えてもらい、ノンフィクションの名手、沢木耕太郎作品「檀」を読みました。沢木耕太郎が、「火宅の人」の著者・檀一雄の妻であるヨソ子夫人のもとに一年間通い詰め、インタビュ…

牧野富太郎著「牧野富太郎自叙伝」

2023年8月8日(火) 現在のNHKの連続テレビ小説「らんまん」の主人公、牧野富太郎の自叙伝を読了。95年の生涯を一兵卒の植物学者として、植物分類学に捧げ、採集した標本は60万点、命名した植物は2千5百余という、巨人が綴った生涯。 年譜を見ると、1884年(…

辺見庸著「瓦礫の中から言葉を」

2023年8月2日(水) 辺見庸著「瓦礫の中から言葉を わたしの〈死者〉へ」読了。本書は、2011年4月24日に放送されたNHK「こころの時代 瓦礫の中から言葉を - 作家・辺見庸」で著書が話した内容を、全面的に書き改め、2012年1月に出版されたもの、東日本大震災…

辺見庸著「ナイト・トレイン 異境行」

2023年7月17日(月) こう連日猛暑に苛まれては、読書をする気にもならず、居間のソファで扇風機の風下に陣取り、ごろ寝するばかり。 随分時間がかかって、辺見庸著「ナイト・トレイン 異境行」をやっと読了。 文中に、ビールBIA SAIGONや333(バーバーバー…

辺見庸著「赤い橋の下のぬるい水」

2023年6月20日(火) 辺見庸作品の2冊目、「赤い橋の下のぬるい水」読了。東北人の著者(宮城県石巻市出身)らしく、根底に暗いものが漂うファンタジー。 大学の同期で、辺見庸と同じ県立石巻高校出身者は3名、A氏は大学の軽音楽部で鳴らしたサックスの名手…

オタ・パヴェル著「美しい鹿の死」

2023年6月9日(金) オタ・パヴェル著、千野栄一訳「美しい鹿の死」読了。著者は1930年、ユダヤ人の父親とチェコ人の母親のもとプラハに生まれる。チェコスロバキア放送に入り、スポーツ記者として活躍していたが、1971年本書を発表するやいきなりベストセラ…

川瀬慈著「エチオピア高原の吟遊詩人」

2023年6月5日(月) 世界遺産「ラリベラの岩窟教会群」等があるエチオピアにはとうとう行けず仕舞いに終りましたが、現地の文化や習俗に少しでも触れることができるかと、川瀬慈(いつし)著「エチオピア高原の吟遊詩人 うたに生きる者たち」を読んでみまし…

藤野千夜著「じい散歩」

2023年5月28日(日) 藤野千夜(ちや)著「じい散歩」読了。主人公は、引きこもり、性的マイノリティー、パラサイトの3人の独身アラフィフ息子(8050問題)を抱え、89歳の妻の老々介護も引き受ける90歳の明石新平、もはや散歩どころではないが。 高齢化社会…

オタ・パヴェル著「ボヘミアの森と川 そして魚たちとぼく」

2023年5月25日(木) オタ・パヴェル著、菅寿美/中村和博訳「ボヘミアの森と川 そして魚たちとぼく」読了。著者の自伝的短編集第2作目にして、幼い日に故郷ボヘミアの川で釣りの手ほどきをしてくれた、父親と渡し守のプロシェク叔父さんへの抒情溢れる鎮魂…

辺見庸著「もの食う人びと」

2023年5月18日(木) 辺見庸作品の中で一番人気がある「もの食う人びと」(1994年講談社ノンフィクション賞受賞)を読む。初めは柏市の図書館から借りて読み、気に入ったので、途中からメルカリで購入して読みました。 辺見庸は私と同郷の宮城県出身、1944年…

藤原章生著「酔いどれクライマー 永田東一郎物語」

2023年5月6日(土) 表題作を読了。本書は、毎日新聞に連載された「酔いどれクライマー 永田東一郎伝」(2021年10月~2022年4月掲載)を原案に、大幅に改稿された書き下ろし作品。永田東一郎と著者藤原章生は都立上野高校山岳部の先輩と後輩、その後、永田は…

渡邉格・麻里子著「菌の声を聴け」

2023年4月26日(水) 渡邉格(いたる)・麻里子著「菌の声を聴け タルマーリーのクレイジーで豊かな実践と提案」読了。タルマーリー(格と麻里子の名前から、多分)は、元々千葉県いすみ市に渡邉夫妻が2008年に開業した天然酵母を用いる小さなパン工房、2011…

河野啓著「デス・ゾーン」

2023年4月21日(金) 河野啓作「デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場」読了。山に関係する本は、つい読んでしまいます。 異色の登山家?、栗城史多(くりきのぶかず、1982-2018年)、北海道・酪農学園大学の山岳部員ではあったが、特筆すべき登山経験や技…

ヨーゼフ・ロート作「ラデツキー行進曲」

2023年4月13日(木) ヨーゼフ・ロート著、平田達治訳「ラデツキー行進曲」を読んでいます。 岩波文庫の上下2冊、上巻は先の帰省中に読み終えました。今は下巻を読み始めています。 第一次世界大戦前後のハプスブルク帝国の落日を、新興貴族一族三代の運命を…

内館牧子著「すぐ死ぬんだから」

2023年3時27日(月) 「終わった人」「今度生まれたら」「老害の人」などと並ぶ内館牧子の高齢者小説、「すぐ死ぬんだから」読了。 毎度ワンパターンの、暇潰しレベルの内容ですが、良く人間観察をしている事には感心します。漫談家の綾小路きみまろと良い勝…

大竹英洋著「そして、ぼくは旅に出た。はじまりの森 ノースウッズ」

2023年3月25日(土) ブログ「365連休の日々」の作者tonaさんからご紹介頂き、柏市の図書館から借りて読みました。 著者は1975年生まれ、一橋大学社会学部卒業、同大ワンゲル部出身の自然写真家。本書はナショナル ジオグラフィック日本版のウェブサイトで、…

藤田孝典著「下流老人」

2023年3月16日(木) 藤田孝典著「下流老人 一億総老後崩壊の衝撃」読了。著者は1982年生まれの40歳、埼玉県内を中心に生活困窮者支援を行うNPO法人を立ち上げ、活動している。 タイトルの「下流老人」は「後期高齢者」と並ぶ失礼な造語、敬老の心が全く感じ…

内館牧子著「今度生まれたら」

2023年3月10日(金) 内館牧子著「今度生まれたら」読了。内館牧子作品を読むのは「終わった人」に次いで2作目です。 著者は1948年生まれの74歳、もう怖いもの無しで、女性の本音がズバズバ、男性批判も女性批判も的を得ていて笑えますが、私の「大和撫子」…

色川武大著「離婚」

2023年3月5日(日) 色川武大の作品をもう一冊読みました。昭和53年(1978年)、第79回直木賞受賞作品の「離婚」です。 敗戦後の昭和は、バブルが弾ける1990年までは右肩上がりの好景気が続き、結婚、事実婚、同棲、家庭内別居、別居、卒婚、事実離婚、離婚…

李琴峰著「彼岸花が咲く島」

2023年2月25日(土) 第165回(2021年)芥川賞受賞作、李琴峰(り ことみ)著「彼岸花が咲く島」読了。著書は1989年台湾生まれ、2013年来日し、早稲田大学大学院日本語教育研究科修士課程終了。 母語(は中国語)でもない日本語で小説を書き、芥川賞を射止め…

原田康子著「挽歌」

2023年2月21日(火) 先日、読み終えた岡田喜秋著「日本の秘境」の中の一文「季節外れの阿寒をゆく」の中に、原田康子著「挽歌」が出てきたので、懐かしくて市立図書館から借り出し、数十年ぶりに再読してみました。 昭和31年(1956年)東都書房から単行本と…

大河内基夫著「技術屋のビール戦争五十年史」

2023年2月16日(木) 大河内基夫著「技術屋のビール戦争五十年史」読了。著書は京都大学農学部農芸化学科卒、私が勤務していた会社の同僚で、在職中にミュンヘン工科大学の醸造学科に社命留学しブラウマイスターの資格(Diplom-Braumeister)を取得した、正…

色川武大著「狂人日記」

2023年2月11日(土) 色川武大(1929年-1989年)著の第40回読売文学賞受賞(1988年)作品「狂人日記」読了。 幻聴・幻覚が絶え間なく現れる閉ざされた世界で、じりじりと自分を追い詰め、また、健常者の世間から追い詰められていく、精神を病む五十男の主人…

深田久弥著「雪白き山」

2023年2月4日(土) 厳寒期は、アウトドア記事が主体の当ブログも種切れ状態、最近は単なる読書ノート、「本と酒の日々」であります。 二見書房の山岳名著シリーズ、昭和44年(1969年)初版の深田久弥著「雪白き山」読了。「百の頂に百の喜びあり」は深田久…

岡田喜秋著「日本の秘境」

2023年2月1日(水) 岡田喜秋著「日本の秘境」読了。昭和35年(1960年)、東京創元社発行のぼろぼろの本は、市立図書館にはなく、やむなく県立西部図書館から借りたもの。 岡田喜秋(1926年~)は、1947年日本交通公社に入社、同社が発行する月刊誌「旅」の…

ダライ・ラマ著「チベットわが祖国」

2023年1月28日(土) 14世ダライ・ラマ著、木村肥佐生訳、「チベットわが祖国」読了。初めは、柏市立図書館から借りて読み始めたものの(写真上)、手元に置いて、じっくり読むために、アマゾンで購入し(写真下)、蔵書に加えました。 1962年に、ダライ・ラ…

岡田喜秋著「青春の山想」

2023年1月23日(月) このところ二見書房の山岳名著シリーズに嵌まっています。今回は大学の大先輩でもある岡田喜秋(1926年~)の「青春の山想」を読みました。 岡田喜秋は東京都出身、高校時代を松本、大学時代を仙台で過ごし、1947年日本交通公社に入社、…

開高健著「オーパ、オーパ‼️」

2023年1月21日(土) 開高健著「オーパ、オーパ‼️ モンゴル・中国篇、スリランカ篇」を30年振りに再読。図書館から借りたのではなく、私の蔵書です。いずれも開高健(1930-1989年)晩年の作。 モンゴル篇は、1986年と1987年の2年連続、モンゴル高原の奥地へ…

鎌田孝一著「白神山地に生きる」

2023年1月17日(火) 秋田県側で白神山地ブナ原生林の保全・保護活動にいち早く取り組んだ「白神山地のブナ原生林を守る会」理事長、鎌田孝一氏の著書、「白神山地に生きる」読了。 白神山地に残る手付かずのブナ原生林は16,000ヘクタール、その大部分は青森…

町田そのこ著「52ヘルツのクジラたち」

2023年1月12日(木) 2021年本屋大賞受賞作品。柏市立図書館に貸出しを申し込んで待つこと一年近く、このほど漸く順番が回って来て読む事が出来ました。 児童虐待、性同一性障害、果ては認知症までを扱った物語。それらの人々の象徴として、仲間(ほとんどの…