楽山楽水日記(Ⅱ)

仙台市出身、今は柏市に住んでいます。旅行や山歩き、山菜やきのこ採り、家庭菜園、釣りなど、楽隠居の日々を綴ります。

坂上弘著「優しい碇泊地」

2022年7月26日(火)
坂上弘(さかがみひろし)は「内向の世代」(1970年前後に登場した若手作家群の呼称。政治的イデオロギーには距離を置き、個人の内面を描く作風を、文芸評論家の小田切秀雄が批判的に命名したもの。他に、古井由吉黒井千次、小川国夫など)に属する作家ですが、昨年8月、著者が千葉県内で亡くなった記事を見て、代表作を読んでみようと、読売文学賞受賞作品(第43回、1992年)の本作を、私の「読みたい本リスト」に登録したものです。

内容は、バブル最盛期の頃(1980年代後半)、企業相手の小さな語学教育会社(実態は、外国人語学講師の派遣会社)に入社した青年の物語。主人公の青年は、語学教育会社をステップに留学費用を貯め、将来はアメリカでMBAを取得し、経営コンサルタントを目指しますが、その語学教育会社で出逢う起業家の社長、同僚、外国人講師との交流が描かれます。
当時は円高を背景に、日本企業が、日本人が、海外に陸続と進出した時代、私も初めての海外出張(1986年)の前には、付焼刃で1ヶ月ほどベルリッツに通いました。会社の将来を担う幹部候補生は、技術系ならMITや、ミュンヘン工科大学醸造学科へ2年間留学、事務系もアメリカの各大学へ留学しMBA取得を目指したものです。MBA取得後、会社に残らず転職した人が何人も居ます。中には成功した人もあれば、そうでもない人も、、本書を読んで、人生模様が色々である事を思いだしました。