楽山楽水日記(Ⅱ)

仙台市出身、今は柏市に住んでいます。旅行や山歩き、山菜やきのこ採り、家庭菜園、釣りなど、楽隠居の日々を綴ります。

西川一三著「秘境西域八年の潜行 抄」

2022年11月5日(土)

長い時間をかけて、漸く西川一三著「秘境西域八年の潜行 抄」を読み終えました。

著者西川一三(1918-2008年)は、日中戦争の最中の昭和18年10月、駐蒙大使館調査部所属の密偵として、蒙古人ラマに化けて内蒙古を出発、河西回廊(寧夏、甘粛、青海地方)を巡り、中国軍の配置、戦力、物資輸送ルート等の調査にあたりました。しかしながら20代半ばの青年が単身敵地に潜入して出来る事は殆どなく、逃避行のような状態に終始、内蒙古を出発して2年後(終戦後の昭和20年9月か10月頃)にチベットのラサに流れ着きます。それから昭和24年10月にインド官憲に逮捕される迄の4年間は、目的もなく単なる放浪者、ラサ最大のレプン寺にもぐり込み、最下層の雑役僧として修行したり、インドとチベット国境の町で物乞いや運び屋をして暮らしたり、インドの仏跡(ブッダガヤ、ラージギリ、サルナートなど)を巡る托鉢行をしたりと居所定まらず、最期はインドのシリグリで鉄道建設の苦力(クーリー)として働いていた時に身分が発覚、8ケ月間の勾留を経て、昭和25年5月中旬カルカッタから強制送還、同年6月13日神戸港帰着にて延べ8年に亘る潜行に終止符を打ちました。その後、90才で天寿を全うするまで盛岡市で理美容材卸業に従事して暮らした由、山口県出身の著者が如何なる縁が東北にあったのか。むしろ帰国後の日本潜行生活がどのようなものであったのか、そちらの方が興味深いです。次はダライ・ラマ自叙伝の「チベットわが祖国」を読む予定です。😊