楽山楽水日記(Ⅱ)

仙台市出身、今は柏市に住んでいます。旅行や山歩き、山菜やきのこ採り、家庭菜園、釣りなど、楽隠居の日々を綴ります。

黒川創著「もどろき」

2022年9月9日(金)
黒川創著「もどろき」読了。この著者の作品としては、「ウィーン近郊」、「かもめの日」に続き3作目。本作品は第124回(2000年下期)芥川賞候補作。
タイトルの「もどろき」は、琵琶湖西側の京都府滋賀県境の峠に鎮座する還来(もどろき)神社(滋賀県大津市伊香立途中町518)に由来する。祭神は、桓武天皇夫人の藤原旅子(たびこ)。

内容はこの作者らしく、劇的な要素は何もなく、平凡な市民3世代の物語。父親の自殺により京都市内にある古家を相続した、東京に住む長男を軸に、同じく東京に住む長女(妹)と、一番下のベルリン留学中の弟が絡んで始末に悩む中、その古家で米屋を営んでいた祖父、祖父の養子であった公務員の父親の思い出を回想する下りが延々。
私も築100年の仙台の実家を相続し、古家の始末に大変苦労したので身につまされます。押入れ、天袋、箪笥、戸棚、引き出し等、あらゆる荷物収納場所に不要品がぎっしり、ため息しか出ませんでした。仙台転勤になったのを幸い実家に住み、2年間かけて漸く片付け、その後解体撤去、神棚、仏壇と、厳選した両親の思い出の品は、近くのマンションを購入して納めました。跡地は更地にして今は駐車場になっていますが、長男は墓守はじめ何かと大変です。