楽山楽水日記(Ⅱ)

仙台市出身、今は柏市に住んでいます。旅行や山歩き、山菜やきのこ採り、家庭菜園、釣りなど、楽隠居の日々を綴ります。

大牟羅良著「ものいわぬ農民」

2021年8月17日(火)
雨続きで畑仕事が出来ないため読書が捗る。岩波新書を読むのは久しぶり。著者は1909年岩手県九戸郡生まれ。沖縄から復員後盛岡市に戻り、生活のために古着の行商人となって1947年~1950年の4年間県内の山村を歩き、そこで見聞した山里の暮らし、農民の声を採集、更にその後の7年間の農民雑誌「岩手の保健」の編集者として、ものいわぬ農民の本音を探って、山村農民の課題を明らかにしたもの。岩手県出身の画家、高原栄人氏の素朴なカットが秀逸。
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当時、日本のチベットと呼ばれた岩手県の、そのまたチベットと言われた山村僻地の暮らしは厳しい。例えば山奥の一軒家で留守番するお婆さんの話、「なぁに、こんたな体に、くすりっコ貰って飲んでも、枯れ木にこやしっコやるようなもんでがんすぺ」「おらァ、死ぬのを待ってるばかりでがんす」「あの世へ行ったら、雨コにも風コにも当たらなくて、よがんすべ」。
戦後の農地改革、経済発展と道路網の整備、エネルギー革命、機械化農業の進展等で山村生活も様変わり、今では想像も出来ない農村・農民の原点の姿が記されている。母親の実家も多賀城市の農家、北側の陽も射さない納戸のような薄暗い隠居部屋を思い出します。