2021年8月13日(金)
著者は1934年岐阜県高山市の生まれだが、1958年の結婚以来仙台に60年以上在住。1969年から宮城県を中心に東北各地に出向いての民話採集をライフワークにしている由、仙台繋がりで読んでみました。
民話そのものが中心の本ではありません。民話を語って聞かせてくれた人々の物語、全十七話、東北人の、慎ましさ、素朴さ、床しさ、優しさ、粘り強さ、健気さに溢れています。そして切なさと儚さとやるせなさと。
私が小さい頃、父方の大伯母から何編か昔話を聞いた覚えはありますが、何せ60年以上前のこと、内容は完全に忘れてしまいました。
民話や昔話は恐らく、身過ぎ世過ぎの技や術を、処世のヒントを口承で、文字を読めない人々に伝える手段であったろうと思いますが、伝達手段が様々に発達した現代では廃れる一方です。日本人の心の原風景を求めて、採訪という地道なフィールドワークを今尚続けている筆者は、もはや立派な仙台人、尊敬します。読んで良かったと思える一冊でした。