2025年7月3日(木)
木村肥佐生著、スコット・ベリー編、三浦順子訳、「チベット 偽装の十年」(1994年初版)読了。柏市立図書館にはなかったので、千葉県立西部図書館から借りて読みました。本書はスコット・ベリーが木村肥佐生の著書「チベット潜行十年」(1958年毎日新聞社、1982年中公文庫)を種本に、木村比佐夫にインタビューした内容を加えて書いた「Japanese Agent in Tibet」(1990、Serindia Publications)を日本語に翻訳したもの、ややこしい。

木村肥佐生(1922-1989)は、沢木耕太郎著「天路の旅人」の主人公、西川一三と同じ日本の諜報部員、1940年モンゴルに入り、僧侶に変装し、殆ど同じコースを辿ってチベットのラサに潜入、1949年中国共産党軍が迫るラサから不穏分子として強制追放、カルカッタでインド官憲に出頭、その当時インドのカリンポンで鉄道工事に従事していた西川一三の存在を明かしてしまい、2人とも密入国の罪で刑務所に収監され、1950年5月10日本国送還、5月31日神戸に上陸、日本に帰国。
帰国してからの二人の生き様は対照的、東チベットを二人で苦労して周回した仲なのに、帰国後の交流は殆どなかった様である。西川一三は盛岡市に住み、ベストセラーとなった回想録「秘境西域八年の潜行」(1976年、芙蓉書房)を出版してから後はモンゴル・チベット体験は卒業、理美容器材卸商の店主としてストイックな生涯を生きる。一方の木村肥佐生は、西域潜行十年の経験を生かし、駐日アメリカ大使館勤務(1951-1976、情報収集業務)を経て、亜細亜大学アジア研究所教授(1977-1989)になりチベット・モンゴル研究を継続、チベット難民の子弟を日本に招き面倒を見るなど、平成元年8月25日、念願のウルムチへの出張の途中の北京で十二指腸穿孔で倒れるまで、同年10月逝去するまで、チベットに関わり続けた一生であった。